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​キャラバン

 

 キャラバンを始めたきっかけは、幾つかあります。一つは、当研究室のように学生人数が多いと、お互いに自分以外のフィールドをあまり訪れたことがなく、ゼミをやっていても発表内容の理解が浅くなり、良い議論にならないという状況がありました。また、せっかく様々な分類群を様々なフィールドで行っているのに、お互いのテーマをつなぐ新しい魅力的な課題や考えが、研究室全体で共有できていないと感じました。そこで、可能な限り、「百聞は一見に如かず」で、現在研究室で実施されているプロジェクトや研究サイトを全員で視察することにしました。現地で議論することによって、自然とお互いの理解が進み、新しいテーマや魅力的なリサーチクエスチョン、そして研究室全体の連帯感が生まれることを期待しました。

 もう一つは、私や森本先生のこれまで学んできた知識や経験を、フィールドで学生と共有することです。テーマとなっている研究や考え方の歴史を、現物を前にして伝えることは、研究室での論文紹介とは違って、肌で感じ直観的に理解できる良さがあります。フィールド科学分野としては、実体験を重視したいのです。私がオレゴン州にあるアンドリュース実験林を訪れた際、保残伐施業で有名なJerry Franklinがワシントン大学の学生を連れて巡検を行っていました。70歳を超え現役を引退した著名な研究者が、今なお、炎天下、そしてキャンプファイアーの前で、若い学生たちになぜ自分が保残伐を考えたか、そしてなぜ全米の長期生態学的研究(Long-term Ecological Research)を始めたかを、滔々と語るその姿に感銘を受けました。私も少しでもその役割を果たしたいと思った次第です。

キャラバンについては、魚眼図でも紹介していますので、そちらもご覧ください。

魚眼図「キャラバン」(2009年8月4日)

中村太士​

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